小売商標制度について

小売商標規定の経緯

従来の法律では、小売業のサービスは商標登録することができず、大手のスーパーは使用する商品全て(最大34区分)を出願しなければならず、手続や費用的な負担が極めて大きい状況にありました。そのため、小規模の商店やネットショップ等は商標権による保護を十分に受けることができない状況にありました。

国際的な商標制度の改訂を機に、日本においても「小売」を35類に含まれるサービスとして保護の対象とするべく、法改正されております。

保護対象について

「小売サービス」としての商標の使用に該当する使用方法としては、
例えば、以下の場所やものに商標を付している場合になります。

路面店の場合

  • 店舗の看板、のぼり
  • 店員の制服、帽子、名札
  • ショッピングカート
  • 店内の案内板、試着室
  • 包装紙、買い物袋(レジ袋)
  • 店頭に飾られた商品見本
  • 電車内のつり広告
  • 新聞広告    など

通販、ネットショップの場合

  • カタログ販売における商品カタログ
  • 価格表
  • ネットショップのTOP画面の商標表示
  • サイト上で取扱商品の広告表示
  • 電車内のつり広告
  • 新聞広告    など

出願に際しての注意

役務の指定について

小売サービスを指定して商標登録出願を行う場合、使用予定のない商標の乱立を防止するため、1分野(例えば、以下の各項に定める範囲)以上を指定する場合は、審査においてその分野における商標の使用実績又は使用予定の状況を書面で提出する必要があります。
そのため、以下の各分野のサービスについて複数の小売サービスを指定する場合は、使用実績又は使用予定の資料をまとめておく必要があります。

なお、出願時に揃っていなくとも、審査時において特許庁より求められた際(拒絶理由通知)に提出できれば問題ありません。

小売サービスの分野(例示)
  1. 織物及び寝具類,被服,履物,かばん類及び袋物,身の回り品
  2. 飲食料品
  3. 自動車
  4. 家具,建具,畳類
  5. 葬祭用具
  6. 電気機械器具類
  7. 手動工具・手動利器・金具,台所用品・清掃用具及び洗濯用具
  8. 薬剤・医療補助品,化粧品・歯磨き・石鹸類
  9. 農耕用品,花及び木
  10. 燃料
  11. 印刷物,紙類・文房具類
  12. 運動具,おもちゃ・人形・娯楽用具
  13. 楽器及びレコード
  14. 写真機械器具及び写真材料
  15. 時計及び眼鏡
  16. たばこ及び喫煙用具
  17. 建築材料
  18. 宝玉及びその模造品(原石等)
  19. 愛玩動物
  20. 自動二輪車・自転車

総合小売について

総合小売とは、「衣・食・住」の全ての商品が揃っている小売業、いわゆる百貨店のことをいいます。

総合小売(出願時の指定役務名は「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」となります。)は、商品との類否判断を行わないことから、上記1~20の小売と比較して登録されやすい範囲といえます。

いわゆる「総合小売」を指定した場合において、拒絶理由が通知される場合
  1. 個人による出願の場合
  2. 出願人が総合小売を行っていない場合(将来行う予定がある場合)

しかし、総合小売の場合は使用に関する規制が厳しく、総合小売としての使用を行っている証拠が必要となります。特に以下の場合は審査において使用状況について審査官より拒絶理由通知を受けますので、使用を証明する書類のご準備をお願いします。

使用を証明する書面(例)
  1. カタログ、パンフレット、広告、取引書類
  2. 商標の使用状況を写した写真、公的機関の証明書(官庁への提出書面)等
  3. ネットショッピングにおけるトップ画面(ネットショップの店舗名の表示)
  4. その他、商品の包装、商品の価格表、取引書類、広告自体に表示されている場合においては、その表示態様に応じて使用を証明する書面となります。

出願を行う商標について

審査の経過において、出願人が使用の証明等の手続が必要となる場合があります。
ここで、その手続きにおいて商標の使用を示す証拠を提出する際に、出願された商標と証拠として提出された商標とが同一であることを要求される可能性があります。
そのため、小売のサービスを指定して出願を行う場合は、実際に使用する商標を出願商標とすることをお勧めします。

商標出願をお考えの際は

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